Jupyter notebookのファイル (.ipynbファイル)をそのまま実行したい、って場面は結構あります。notebookファイルから通常のPythonファイル(.pyファイル)に変換しておけばいいじゃないか、という意見もあると思いますし、それはそれでごもっともです。ただ、僕個人の事例で言うと、個人的に開発してるツールの中に土日に触る時はちょっとずつ編集して改良して実行し、平日はそのまま全セルを実行するだけってnotebookファイルなどもあります。そのようなファイルについて、逐一上から順番にnotebookのセルを実行していくのはやや面倒です。
と言うことで、.ipynbファイルをコマンドラインからバッチのように実行できると便利、ってことでその方法を紹介していきます。
Google等で検索するとよく出てくる方法と、もう一つ、ドキュメントを読んでいて見つけた方法があるのでそれぞれ紹介します。後者の方法の方が手軽なので、まずそちらを書きます。
jupyter execute コマンドを使う方法
一つ目に紹介する方法は、jupyter execute コマンドです。
ドキュメントはこちら。
参考: Executing notebooks — nbclient – Using a command-line interface
これはすごく簡単で、以下のコマンドで実行するだけです。
$ jupyter execute {ファイル名}.ipynb
# 以下出力
[NbClientApp] Executing {ファイル名}.ipynb
[NbClientApp] Executing notebook with kernel: python3
コマンド名は直感的でわかりやすくて記述量も少なくて僕は気に入っています。
ただし、注意点があってこの方法でnotebookを実行しても元のnotebookファイルは更新されません。つまりどう言うことかと言うと、notebook内の出力領域に表示されるはずの情報は残らないと言うことです。printしたテキストとか、matplotlib等で表示した画像などは見れず、ただプログラムが走るだけと言う状態になります。
そのため、この方法でnotebookを実行する場合は必要な出力はnotebookの外部に保存するように作っておく必要があります。必要な結果はファイルに書き出すとかDBに保存するような実装にしておきましょう。
次に紹介する方法(ググるとよく出てくる方法)では、実行結果の出力を残せるので、このexexuteコマンドでも何かオプションを指定したら実行結果を残せるだろうと思って探してたんですが、どうも今日時点ではそのような機能は実装されていなさそうです。今後に期待したいところです。
全体的にオプションも少なく、その中でも実際使えるものというと実質的に次の二つだけかなと思います。
# $ jupyter execute --help の出力結果から抜粋
--allow-errors
Errors are ignored and execution is continued until the end of the notebook.
Equivalent to: [--NbClientApp.allow_errors=True]
--timeout=<Int>
The time to wait (in seconds) for output from executions. If a cell
execution takes longer, a TimeoutError is raised. ``-1`` will disable the
timeout.
Default: None
Equivalent to: [--NbClientApp.timeout]
–allow-errors をつけると、エラーが発生してもそれ以降のセルも実行されるようになります。これをつけてない場合は、エラーになったセルがあればそれ以降のセルは実行されません。
試してみたのですが、–allow-errorsをつけていると、エラーになったセルがあってもそのエラー文等は表示されないので、リスクを伴うオプションだと思います。エラーになったらその旨を外部のログに残す実装になっていないと自分で気づく手段がありません。なお、–allow-errorsをつけてない場合、エラーになるセルがあったらそこで標準エラー出力にエラーを表示して止まるので気付けます。
–timeout の方はデフォルトでタイムアウト無しになっているのであまり気にしなくても良いかと思うのですが、異常に長く時間がかかるリスクがある場合などは設定しても良いでしょう。
jupyter nbconvert コマンドを使う方法
次に紹介するのは、 jupyter nbconvert コマンドを使う方法です。jupyter notebookをコマンドライン(CUI)で使う方法として検索するとよく出てくるのはこちらの方法です。
nbconvert 自体は、notebookを実行するコマンドじゃなくて、別の形式に変換するコマンドなので、正直これをnotebookの実行に使うのって抵抗あるのですが、どういうわけかこちらの方がいろんなオプションが充実していて、実行専用と思われる先ほどの jupyter execute コマンドよりも柔軟な設定が必要です。詳細は不明ですが歴史的な経緯か何かによるものでしょうか。
ドキュメントはこちら
参考: Executing notebooks — nbconvert 7.1.0.dev0 documentation
基本的な使い方は次のようになります。–to でファイルの変換先のタイプを指定するのですが、そこでnotebookを指定して、さらに–execute をつけると実行されます。
$ jupyter nbconvert --to notebook --execute {ファイル名}.ipynb
# 以下出力
[NbConvertApp] Converting notebook {ファイル名}.ipynb to notebook
[NbConvertApp] Writing {ファイルサイズ} bytes to {ファイル名}.nbconvert.ipynb
上記の出力をみていただくと分かる通り、実行した結果を、{ファイル名}.nbconvert.ipynb という新しいファイルに書き出してくれています。これの内容がセルを(空のセルを飛ばしながら)上から順番に実行した結果になっていて、こちらの方法であればnotebookの出力領域にprintした文字列やmatplotlibの画像なども残すことができます。
細かいオプションについては、 jupyter nbconvert –help で確認可能ですが、 先ほども書きましたがexecuteよりもたくさんあります。
–allow-errors は同じように指定できますし、 –output {ファイル名} で、書き込み先のファイル名を変更することも可能です。
ちなみにデフォルトだと、上記の実行例の通り{ファイル名}.nbconvert.ipynbに書き込みますが、既に同名のファイルが存在した場合は上書きしてしまいます。そのため、毎回の実行履歴を残しておきたいならば出来上がったファイルを退避しておくか、–outputオプションで別の名前をつける必要があるでしょう。
–inplace をつけて、別ファイルに書き出すのではなくて、元のファイルを置き換えるなども可能です。この辺の細かい調整を行えるのがnbconvertの方を使える利点ですね。executeの方にも実装していただきたいものです。
まとめ
以上で、jupyter notebookファイルをコマンドラインで実行する方法を二つ紹介してきました。それぞれメリットデメリットあるので用途に応じて便利な方を使っていただけたらと思います。