Pythonで複数行の文字列の行頭の空白を削除する

textwrapという標準ライブラリを最近知り、その中にdedentという便利なメソッドがあったのでその紹介です。
参考: textwrap — テキストの折り返しと詰め込み — Python 3.11.0b5 ドキュメント

ドキュメントのページタイトルにある通り、本来は長いテキストを折り返すためのライブラリです。

さて、Pythonでは基本的な技術ですが、三重引用符(“””か、”’)で囲むことによって、複数行のテストオブジェクトを生成できます。
参考: テキストシーケンス型

これをやるときに、コードの見た目をきれいにするためにインデントをつけると、こんな感じになってしまいます。(あくまでも例として出してるサンプルコードであって、走れメロスの本文を属性に持つクラスを作りたかったわけではありません。)

class foo():
    def __init__(self):
        self.text = """
            メロスは激怒した。
            必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
            メロスには政治がわからぬ。
            メロスは、村の牧人である。
            笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。
            けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
        """


obj = foo()
print(obj.text)
# 以下出力

            メロスは激怒した。
            必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
            メロスには政治がわからぬ。
            メロスは、村の牧人である。
            笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。
            けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
        

これをやると、各行の先頭に要らない半角スペースが入ってしまいます。上記のコードの例であれば各行12個入ってます。ついでに前後に不要な改行があり、空白行がそれぞれできています。これを避けるには次のように書かなければいけません。

class bar():
    def __init__(self):
        self.text = """メロスは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。
メロスは、村の牧人である。
笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。"""


obj = bar()
print(obj.text)
# 以下出力
メロスは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。
メロスは、村の牧人である。
笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。

上のコードくらい短ければいいのですが、長いコードにこういうのが入ると非常に不恰好です。実際日本語の文章がこんなダラダラコード中にハードコーディングされることは滅多にないのですがそれはさておき。

ここで、先述のtextwrap.dedentを使うと、そのメソッドが行頭の空白を消してくれます。

良い点でもあるのですが、テキスト中の「各行に共通する空白」だけ消します。空白が4個の行と8個の行が混在していたら、各行から4個消えて、元々8個存在してた行には4個スペースが残るので、相対的なインデントは保持されるということです。これは結構良い仕様です。

ちなみに、前後の改行コードは消してくれないので、それはそれで、strip()から何かで消します。

これを使うと次のようになります。

import textwrap


# 最初のコード例のクラスのインスタンスで実験
print(textwrap.dedent(obj.text).strip())
# 以下出力
メロスは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。
メロスは、村の牧人である。
笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。

まずdedentを適用して、その結果に対してstrip()をするのが大事です。逆にすると意図せぬ結果になります。

これで、不要な行頭の空白が消えました。

おまけですが、逆に行頭に空白に限らず何かしらの文字列を挿入する、textwrap.indent もあります。これは、テキストと、挿入したい文字列を入れたらいいですね。例えば、 果物の名前の先頭に – (ハイフン) でも差し込みましょうか。

sample_text = """
    りんご
    みかん
    もも
    なし
"""
sample_text = textwrap.dedent(sample_text).strip()  # まず不要な空白消す

print(textwrap.indent(sample_text, "- "))  # 先頭に - 挿入
# 以下出力
"""
- りんご
- みかん
- もも
- なし
"""

このほかにも、textwrapには文字列を折り返したり切り詰めたりするなどの便利なメソッドが用意されています(というより本来そのためのライブラリです)ので、そのうち紹介しようと思います。

mplfinanceで1枚の画像に複数のチャートを描く方法

mplfinanceの4記事目です。今後また書くかもしれないけど一旦、連続でmplfinanceを扱うのは今回までにしようと思います。
今回は1枚の画像に複数のグラフを描く方法です。いろんな銘柄を並べて分析する際には必須の技術ですね。

ドキュメントはこちらになります。
参考: mplfinance/subplots.md at master · matplotlib/mplfinance

The Panels Method と、External Axes Method があると書いてありますね。

一つ目のパネルメソッドは特に新しい手法ではなく、以下の記事で紹介した、ローソク足の下にどんどん指標を追加していく方法のことです。
参考: mplfinanceの株価チャートに指標を追加する

ドキュメントにもありますが、この方法はx軸を共有することとか、32個までしか追加できないなどの制限があります。ただ、1銘柄ずつ分析するのであれば手軽で十分な方法だと思います。

今回の記事で紹介するのは、axesを追加していくもう一つの方法です。これはmatplotlibに近い使い方をします。figure(正確には、Mpf_Figure)というオブジェクトを作って、それに対して、subplotを追加し、その中にチャートを書いていきます。

注意しないといけないのは、matplotlibの mpl.figure ではなく、mpfの、mpf.figureを使うことと、plot するときに、ax引数でsubplotを指定することですね。

ドキュメントのサンプルコードでは、次のように4個ハードコーディングした実装が紹介されていますね。

fig = mpf.figure(figsize=(12,9))
<Mpf_Figure size 1200x900 with 0 Axes>
ax1 = fig.add_subplot(2,2,1,style='blueskies')
ax2 = fig.add_subplot(2,2,2,style='yahoo')

s   = mpf.make_mpf_style(base_mpl_style='fast',base_mpf_style='nightclouds')
ax3 = fig.add_subplot(2,2,3,style=s)

ax4 = fig.add_subplot(2,2,4,style='starsandstripes')
mpf.plot(df,ax=ax1,axtitle='blueskies',xrotation=15)
mpf.plot(df,type='candle',ax=ax2,axtitle='yahoo',xrotation=15)
mpf.plot(df,ax=ax3,type='candle',axtitle='nightclouds')
mpf.plot(df,type='candle',ax=ax4,axtitle='starsandstripes')
fig

まぁ、上記のサンプルコードはスタイルの紹介も兼ねてると思いますが、チャートごとにスタイルを変えたいってこともあまりないと思うのでもう少し実用的な例をやってみましょう。

ランダムに選抜した20社のデータを揃えておきました。

print(len(price_df))
# 1680
print(price_df.head(5))
"""
   code        date   open   high    low  close   volume
0  1712  2022-06-01  962.0  989.0  957.0  982.0  94300.0
1  1712  2022-06-02  970.0  970.0  958.0  961.0  65400.0
2  1712  2022-06-03  968.0  976.0  955.0  965.0  79400.0
3  1712  2022-06-06  960.0  969.0  950.0  964.0  83100.0
4  1712  2022-06-07  968.0  978.0  962.0  962.0  65700.0
"""
print(price_df["code"].nunique())
# 20

また、company_name_dict という辞書に “証券コード”: “企業名” という形でデータがあるとします。ラベルに使います。

この20社のデータを1枚の画像にプロットするコードは次のようになります。
なお、日本語が文字化けするので、前回の記事で紹介した対策をやります。
参考: mplfinanceで日本語文字が表示されない問題について
これは複数チャートを描く場合は、mpf.plot ではなく、 mpf.figure のタイミングでstyleを設定しないといけないという罠がありますので注意してください。

出来上がったコードは次のようになります。

import mplfinance as mpf
import matplotlib.pyplot as plt


font_family = plt.rcParams["font.family"][0]  # ファイルで設定したIPAPGothicが入る。
s = mpf.make_mpf_style(
    base_mpf_style='default',
    rc={"font.family": font_family},
)

# styleはこの時点で設定する。
fig = mpf.figure(figsize=(24,35), style=s)
i = 1
for code, sub_df in price_df.groupby("code"):
    ax = fig.add_subplot(5,4,i, title=code + ":" + company_name_dict[code])
    mpf.plot(
        sub_df,
        ax=ax,
        type='candle',
    )
    i+=1

出力される図がこちらです。

しっかりかけましたね。

パネルメソッドではなくaxesを作成する方法のデメリットとして、volume=True を指定するだけでは出来高のグラフを追加できなくなるということが挙げられます。(エラーになります。)

この手法で出来高も表示したい場合は、出来高用にもaxesを作成し、それをvolume引数に渡す必要があります。

さっとサンプルを作ると次のような感じでしょうか。少し狭くてラベルの重なりが発生したりしていますし、何番目のaxesに四本値と出来高を表示するかの指定がトリッキーなコードになっていますがいったん役目は果たすと思います。

font_family = plt.rcParams["font.family"][0]  # ファイルで設定したIPAPGothicが入る。
s = mpf.make_mpf_style(
    base_mpf_style='default',
    rc={"font.family": font_family},
)

# styleはこの時点で設定する。
fig = mpf.figure(figsize=(20, 50), style=s)
i = 1
for code, sub_df in price_df.groupby("code"):
    ax = fig.add_subplot(10,4,i, title=code + ":" + company_name_dict[code])
    ax_volume = fig.add_subplot(10,4,i+4)
    mpf.plot(
        sub_df,
        ax=ax,
        type='candle',
        volume=ax_volume,
    )
    if i % 4 == 0:
        i+=5
    else:
        i+=1

mplfinanceで日本語文字が表示されない問題について

3回続けてになりますが今回もmplfinanceの話です。本当は1枚のfigureに複数チャートを表示する方法について書いてそれで終わりにしようと思っていたのですが、ラベルやタイトルの表示で詰まったので今回先にその記事を書きます。

将来のバージョンでは修正される可能性もあると思うので、この記事で想定しているバージョンを書いておきます。

$ pip freeze # の結果を抜粋
matplotlib==3.5.2
mplfinance==0.12.9b1
jupyterlab==3.4.3

また、matplotlibには以下の記事の設定がされており、標準状態では日本語文字が表示できるとします。(以下の記事の設定を行なっていない場合はこの記事の対応を行なっても表示できません。)
前提記事: matplotlibのデフォルトのフォントを変更する

mplfinanceではmatplotlibのグラフと同じようにタイトルやy軸のラベルの表示ができます。チャートをズラズラと何枚も並べる場合は銘柄や期間の情報が必須なのでとても重要な機能です。

この時、証券コードとか英単語は問題なく表示されるのですが、日本語の文字については設定したstyleによっては表示できないことがあります。

問題について言及する前に、ラベル等を設定する方法について説明します。ドキュメントにはあまり親切なガイドがないので、ソースコードで引数を確認するのが早いと思います。該当箇所はこちらのバリデーション部分

使うのは次の3つです。
– title : タイトル
– ylabel : チャートのy軸のラベル
– ylabel_lower : 出来高のパネルのy軸のラベル

データは次のように適当に用意しました。

print(len(price_df))
# 84
print(price_df.head())
"""
            code    open    high     low   close     volume
date                                                       
2022-06-01  9434  1488.5  1497.0  1477.5  1481.5  7555300.0
2022-06-02  9434  1481.0  1484.5  1471.0  1479.5  5307700.0
2022-06-03  9434  1481.0  1482.0  1472.0  1475.0  5942800.0
2022-06-06  9434  1470.0  1474.5  1466.0  1473.0  5791300.0
2022-06-07  9434  1481.5  1482.0  1465.0  1465.0  7202900.0
"""

二つのstyleでサンプルをお見せします。
style を未指定(‘default’を指定するのと同じ) と、 ‘yahoo’を指定して出してみたのが次です。

import mplfinance as mpf
import matplotlib.pyplot as plt


mpf.plot(
    price_df,
    type="candle",
    title="ソフトバンク",
    ylabel="株価",
    ylabel_lower="出来高",
    volume=True,
)
plt.show()
mpf.plot(
    price_df,
    type="candle",
    title="ソフトバンク",
    ylabel="株価",
    ylabel_lower="出来高",
    volume=True,
    style='yahoo'
)
plt.show()

ご覧の通り、2枚目のstyle=’yahoo’の方は日本語が表示できていますが1枚目の未設定(デフォルト)の方は白い箱になっています。

一番簡単な対応は、日本語が使えるstyleを使うと決めてしまうことですね。お手軽なのでそれでも良いと思います。どのstyleなら使えるのかって判断は試すのが早いです。

ただ、僕はなぜこんな現象が起きるのか気になったので、ソースを読んで原因を調査しました。以降はその調査結果の話になります。

まず、mplfinance の style というのは、本来 mpf.make_mpf_style というメソッドを使って作った辞書によって指定するものです。毎回全部指定して作るのは大変なので、ライブラリでdefault とか yahoo といった手軽に使える設定のセットが用意されていて、ここまで使っていたのがそれです。その設定の中身なのですが、こちらのディレクトリのファイル群の中に記述されています。
参考: mplfinance/src/mplfinance/_styledata at master · matplotlib/mplfinance

_始まりのディレクトリなので、Pythonのお作法的には import されることは想定してないはずですが、次のようにして中身を見ることができます。

# style='default'の設定
print(mpf._styledata.default.style)
"""
{'style_name': 'default',
 'base_mpl_style': 'seaborn-darkgrid',
 'marketcolors': {'candle': {'up': 'w', 'down': 'k'},
  'edge': {'up': 'k', 'down': 'k'},
  'wick': {'up': 'k', 'down': 'k'},
  'ohlc': {'up': 'k', 'down': 'k'},
  'volume': {'up': '#1f77b4', 'down': '#1f77b4'},
  'vcedge': {'up': '#1f77b4', 'down': '#1f77b4'},
  'vcdopcod': False,
  'alpha': 0.9},
 'mavcolors': ['#40e0d0',
  '#ff00ff',
  '#ffd700',
  '#1f77b4',
  '#ff7f0e',
  '#2ca02c',
  '#e377c2'],
 'y_on_right': False,
 'gridcolor': None,
 'gridstyle': None,
 'facecolor': '#DCE3EF',
 'rc': [('axes.edgecolor', 'black'),
  ('axes.linewidth', 1.5),
  ('axes.labelsize', 'large'),
  ('axes.labelweight', 'semibold'),
  ('lines.linewidth', 2.0),
  ('font.weight', 'medium'),
  ('font.size', 12.0),
  ('figure.titlesize', 'x-large'),
  ('figure.titleweight', 'semibold')],
 'base_mpf_style': 'default'}
"""

# style='yahoo'の設定
print(mpf._styledata.yahoo.style)
"""
{'base_mpl_style': 'fast',
 'marketcolors': {'candle': {'up': '#00b060', 'down': '#fe3032'},
  'edge': {'up': '#00b060', 'down': '#fe3032'},
  'wick': {'up': '#606060', 'down': '#606060'},
  'ohlc': {'up': '#00b060', 'down': '#fe3032'},
  'volume': {'up': '#4dc790', 'down': '#fd6b6c'},
  'vcedge': {'up': '#1f77b4', 'down': '#1f77b4'},
  'vcdopcod': True,
  'alpha': 0.9},
 'mavcolors': None,
 'facecolor': '#fafafa',
 'gridcolor': '#d0d0d0',
 'gridstyle': '-',
 'y_on_right': True,
 'rc': {'axes.labelcolor': '#101010',
  'axes.edgecolor': 'f0f0f0',
  'axes.grid.axis': 'y',
  'ytick.color': '#101010',
  'xtick.color': '#101010',
  'figure.titlesize': 'x-large',
  'figure.titleweight': 'semibold'},
 'base_mpf_style': 'yahoo'}
"""

default の方は、font.weight とか font.size とか指定されていますが、yahooの方はそれはないですね。でもどちらもフォントを指定するfont.familyは指定されておらず、この両者でフォントの挙動が変わるのは不思議でちょっと悩みました。

結局わかったことは、base_mpl_style で指定されているmatplotlibのスタイルの影響で動きが変わってるってことでした。
default では seaborn-darkgrid が指定され、 yahoo では fast になっています。

matplotlibのリポジトリで確認すると、seaborn-darkgrid を指定すると、font.familyがsans-serifに書き換えられてしまうってことがわかりました。これによって、せっかく設定ファイルで指定してたIPAフォントが使えなくなってしまっていたのですね。
参考: matplotlib/seaborn-v0_8-darkgrid.mplstyle at main · matplotlib/matplotlib

一方で、fastの方 ではfont.familyが指定されていないので僕が設定ファイルで指定していたIPAフォントが使われていたようです。

以上で原因が分かりましたのでここから対応編です。
全体的にstyle=’default’のデザインを使いたくて、フォントだけ日本語にしたいのであれば、font.familyだけをもう一回設定し直したら良いのです。
次のようなコードで実現できました。引数の base_mpf_style はスペルミスしないように気をつけてください。 さっきまで話題にしてたbase_mpl_styleとは1文字だけ違います。

font.familyの新しい設定値は ‘IPAGothic’ とか ‘IPAexGothic’ とか直接指定しても大丈夫です。ただ、僕はAWS/EC2とMacでフォントが違って書き分けるの面倒なので、rcParamsから取得するようにしています。

# styleの設定値を作る
s = mpf.make_mpf_style(
    # 基本はdefaultの設定値を使う。
    base_mpf_style='default',
    # font.family を matplotlibに設定されている値にする。
    rc={"font.family": plt.rcParams["font.family"][0]},
)

mpf.plot(
    price_df,
    type="candle",
    title="ソフトバンク",
    ylabel="株価",
    ylabel_lower="出来高",
    volume=True,
    style=s,
)

これで以下の図が得られます。

これで、デフォルトのスタイルでも日本語文字が使えるようになりました。

mplfinanceの株価チャートに指標を追加する

前回紹介した、mplfinanceの使い方の続編です。前回はただ単純に四本値でローソクチャートを書きましたが、今回はそれに各種テクニカル指標等を追加する方法を紹介します。
参考: mplfinanceで株価チャートを描く

免責事項
本記事では株式や為替などの金融商品の価格に関するデータをサンプルとして利用しますが、効果や正当性を保証するものではありません。本ブログを利用して損失を被った場合でも一切の責任を負いません。そもそも、この記事ではライブラリを使って図に線や点を追加する方法を紹介しているだけであり、著者自身がこの記事で登場している指標の投資における有用性を検証していませんし、投資にも利用していません。あくまでもこういうコードを書いたらこう動くという例の紹介です。

おきまりの文章が終わったのでやってきましょう。前回同様、こんな感じのデータがあるとします。

print("データ件数:", len(price_df))
# データ件数: 182

print(price_df.head(5))
"""
              open    high     low   close   volume
date                                               
2022-01-04  3330.0  3340.0  3295.0  3335.0  75300.0
2022-01-05  3355.0  3370.0  3320.0  3360.0  62200.0
2022-01-06  3345.0  3370.0  3305.0  3305.0  67200.0
2022-01-07  3315.0  3330.0  3265.0  3295.0  84500.0
2022-01-11  3300.0  3300.0  3215.0  3220.0  87400.0
"""

前回はこれをただそのまま表示しましたが、今回はそれに追加して以下の情報を追加で書いていこうと思います。追記する場所として、四本値のローソク足のパネル、出来高のグラフのパネル、新しいパネルを用意してそこに書き込む、の3種類ができるということ、何かしらの指標を線で表示することや特定の点にマーカーをプロットできる、ということを例示するために以下のような例を考えました。

  • 20日間の高値、安値の線 (四本値のパネル)
  • 高値、安値を更新した点のプロット(四本値のパネル)
  • 過去3日間の出来高の合計(出来高のパネル)
  • 前日の終値と当日の終値の差分(新規のパネル)

まずプロットするデータを作ります。データは四本値のデータと同じ長さで、インデックスの日付が共通のDataFrameかSeriesである必要があります。高値線や安値線などのテクニカル指標の場合は大丈夫雨だと思うのですが、1~2ヶ所点をプロットしたいだけ、といった場合であっても、点をプロットない場所は全部NaN値を入れる形で、同じ長さのデータを作らなければなりません。それだけ気をつければ特に詰まるところはないと思います。
まぁ、元のデータのDataFrameに列を追加する形で作っていけば確実でしょう。

高値安値とその更新した点は次のように作りました。更新点はちょっと上下にずれた位置にプロットしたかったので、それぞれ1.02倍/0.98倍しています。

import pandas as pd
import numpy as np


# 高値線、安値線
price_df["h_line"] = price_df.rolling(20, min_periods=1).max()["high"]
price_df["l_line"] = price_df.rolling(20, min_periods=1).min()["low"]

# 高値、安値を更新した日付を算出
h_breakout_flg = price_df["h_line"].shift(1) < price_df["high"]
l_breakout_flg = price_df["l_line"].shift(1) > price_df["low"]

# 更新日にプロットする値を用意する。
price_df["h_breakout"] = np.nan
price_df["l_breakout"] = np.nan
price_df.loc[h_breakout_flg, "h_breakout"] = price_df.loc[h_breakout_flg, "high"] * 1.02
price_df.loc[l_breakout_flg, "l_breakout"] = price_df.loc[l_breakout_flg, "low"] * 0.98

出来高の3日の和と終値の前日との差分はそれぞれ次のように作れます。

price_df["volume_sum"] = price_df.rolling(3)["volume"].sum()
price_df["close_diff"] = price_df["close"].diff()

これで、サンプルデータが出揃ったので可視化していきます。ドキュメントは前回同様Githubのサンプルコードを参照します。今回見るのはこれです。
参考: mplfinance/addplot.ipynb at master · matplotlib/mplfinance

ドキュメントは頼りないので必要に応じてソースコードもみましょう。

チャートに指標を追加するには、plotメソッドを呼び出すときに、addplot 引数に追加したい指標の情報をdictで渡します。複数追加したい時は追加したい指標の数だけのdictをlistにまとめて渡します。(今回やるのはこちら)。

addplot に渡す辞書というのは以下の例のような結構大掛かりな辞書です。

{'data': date
 2022-01-04       NaN
 2022-01-05    3437.4
 2022-01-06       NaN
 2022-01-07       NaN
 2022-01-11       NaN
                ...  
 2022-09-26       NaN
 2022-09-27       NaN
 2022-09-28       NaN
 2022-09-29       NaN
 2022-09-30       NaN
 Name: h_breakout, Length: 182, dtype: float64,
 'scatter': False,
 'type': 'scatter',
 'mav': None,
 'panel': 0,
 'marker': '^',
 'markersize': 18,
 'color': None,
 'linestyle': None,
 'linewidths': None,
 'edgecolors': None,
 'width': None,
 'bottom': 0,
 'alpha': 1,
 'secondary_y': 'auto',
 'y_on_right': None,
 'ylabel': None,
 'ylim': None,
 'title': None,
 'ax': None,
 'yscale': None,
 'stepwhere': 'pre',
 'marketcolors': None,
 'fill_between': None}

このdictデータを自分で作るのは大変です。そこで、mplfinance が専用のメソッド、make_addplot というのを持っているのでこれを使います。これを使って、追加する指標のデータと、どのグラフに書き込むのか(panel)可視化の方法(type, ‘line’, ‘bar’, ‘scatter’, ‘step’から選択)、マーカーや線のスタイル、大きや色、などの情報と合わせて渡すことでデータを作ってくれます。 (メインの四本値のデータよりそこに加筆する指標を先にライブラリに渡すのって微妙に直感的で無くて使いにくいですね。)

例えば、以下のようにすることで加筆データを生成できます。make_addplotに指定できる引数は上のサンプル辞書のkeyを見るのが早いと思います。だいたいイメージ通り動きます。

import mplfinance as mpf


adp = [
    # 高値安値線。 panel=0 と指定し、四本値と同じパネルを指定
    mpf.make_addplot(price_df[["h_line", "l_line"]], type='step',panel=0),
    # 高値更新位置。 scatter を指定し、markerで上向三角形を指定
    mpf.make_addplot(price_df["h_breakout"], type='scatter',panel=0, marker="^"),
    # 安値更新位置。 scatter を指定し、markerで下向三角形を指定
    mpf.make_addplot(price_df["l_breakout"], type='scatter',panel=0, marker="v"),
    # 出来高の和。 panel=1 とすると 出来高のパネルを指定したことになる。 line を指定して折れ線グラフに。
    mpf.make_addplot(price_df["volume_sum"], type='line',panel=1, linestyle="--", color="g"),
    # 終値の前日差分。棒グラフのサンプルも欲しかったのでbarを指定。panel=2とすると新規のパネルが追加される
    mpf.make_addplot(price_df.close.diff(), type='bar',panel=2),
]

さて、これで加筆データができました。 注意する点としてはpanel ですね。panel=0は四本値のグラフで固定ですが、panel=1は次のチャート描写のメソッドで、出来高の表示をするかどうか指定するvolume引数の値で挙動が変わります。Trueなら、出来高のグラフがpanel=1で、panel=2以降が新規のグラフです。一方Falseなら、panel=1から新規のグラフです。番号を飛ばすことができず、panel=1がないとpanel=2は指定できないので注意してください。

では、前回のグラフに追加して、上記のadpの値も渡してみます。今回、パネルが3個になりますが、panel_ratios でそれぞれの幅の調整ができます。メインの四本値のパネルを大きめにしておきました。

mpf.plot(
    price_df,
    volume=True,  # 出来高も表示
    mav=[10, 20],  # 移動平均線
    addplot=adp,  # 追加指標
    figratio=(3, 2),  # 図全体の縦横比
    panel_ratios=(2, 1, 1),  # パネルの縦幅の比率
)

出来上がった図形がこちらです。

いい感じですね。細かい話ですが、高値安値線はtypeをstepにしてカクカクした線にしていて、高値の方に引いた線はtypeをlineにして斜めにつながる線にしています。好みの問題ですがこういう微調整ができるのが良いですね。

最初はデータの準備等に戸惑ったり、思うような微調整に苦戦したりするかもしれませんが、一回作ってしまうと、あとは銘柄を入れ替えたり期間を変えたりしながらパラパラといろんな検証ができます。scatterで自分の仕掛けと手仕舞いのポイント等を入れて検証したりってことも可能ですね。

mplfinanceで株価チャートを描く

以前、Pythonでローソク足のチャートを描く方法を紹介しました。
参考: pythonでローソク足を描く

この時は、mpl_financeという既にメンテナンスされていないライブラリを使っていました。まぁ、個人的にちょっと使う分には問題ないのですがやはりちょっと不安になりますよね。

その一方で、実は株価チャートを描く別のライブラリがあることがわかりました。それが、
mplfinance です。 名前が非常に似ていますが、これはアンダーバー(_)がありません。
さっき見たらGithubに15時間前のコミットがあり、しっかりメンテナンス継続中のようです。

ドキュメントとなるのは以下の二つでしょうか。Githubのチュートリアルや、サンプルコードが比較的充実しているのでこちらが使いやすそうですね。
参考1 (Github): matplotlib/mplfinance: Financial Markets Data Visualization using Matplotlib
参考2(PyPI): mplfinance · PyPI

今回はこれのチュートリアルを見ながら一番基本的なローソク足と、出来高、あとついでに移動平均線でも書いてみましょう。

まずはデータの準備です。例えば次のような4本値データがあったとしましょう。データ件数とサンプルとして最初の10行表示しています。チャートを描くので、日付と、始値、高値、安値、終値が必須で、出来高がオプションです。

print("データ件数:", len(price_df))
# データ件数: 81
print(price_df.head(10))
"""
         date    open    high     low   close    volume
0  2022-04-01  3710.0  3725.0  3670.0  3715.0  113600.0
1  2022-04-04  3685.0  3730.0  3675.0  3725.0   94200.0
2  2022-04-05  3705.0  3725.0  3675.0  3675.0  113900.0
3  2022-04-06  3650.0  3680.0  3625.0  3635.0  163800.0
4  2022-04-07  3620.0  3660.0  3615.0  3630.0   98900.0
5  2022-04-08  3700.0  3730.0  3660.0  3700.0  135100.0
6  2022-04-11  3840.0  4060.0  3810.0  4045.0  494900.0
7  2022-04-12  4030.0  4210.0  4015.0  4120.0  403000.0
8  2022-04-13  4115.0  4165.0  4080.0  4155.0  184600.0
9  2022-04-14  4085.0  4120.0  4020.0  4065.0  240900.0
"""

これをライブラリが要求する形にする必要があります。まず、日付(date)がデータフレームのインデックスに指定されていないといけません。また、データ型も文字列ではダメで、DatetimeIndexである必要があります。その変形をします。

price_df["date"] = pd.to_datetime(price_df["date"])
price_df.set_index("date", inplace=True)

print(price_df.head(5))
"""
              open    high     low   close    volume
date                                                
2022-04-01  3710.0  3725.0  3670.0  3715.0  113600.0
2022-04-04  3685.0  3730.0  3675.0  3725.0   94200.0
2022-04-05  3705.0  3725.0  3675.0  3675.0  113900.0
2022-04-06  3650.0  3680.0  3625.0  3635.0  163800.0
2022-04-07  3620.0  3660.0  3615.0  3630.0   98900.0
"""

また、データの各列の名前は[“Open”, “High”, “Low”, “Close”, “Volume”] (“Volume”は無くても可)にするよう指定されています。日本語で”始値”とか入っている場合は変換しましょう。
先頭を大文字にしないといけないのかな?と思ったのですが、全部小文字でも動くことが確認できているので、今回はこのまま使います。

なんか、ソースコードを見ると多くの人が要求したから小文字にも対応してくれたそうです。
ここ

    # We will not be fully case-insensitive (since Pandas columns as NOT case-insensitive)
    # but because so many people have requested it, for the default column names we will
    # try both Capitalized and lower case:
    columns = config['columns']
    if columns is None:
        columns =  ('Open', 'High', 'Low', 'Close', 'Volume')
        if all([c.lower() in data for c in columns[0:4]]):
            columns =  ('open', 'high', 'low', 'close', 'volume')

さて、これでデータが揃いました。

ここからの使い方はとても簡単で、こだわりがなければライブラリをimportして、plotってメソッドに渡すだけです。

import mplfinance as mpf

mpf.plot(price_df)

いわゆるOHLCチャートが出力されました。

ここから少しカスタマイズしていきます。

まず、チャートをローソク足にするのは、type=”candle”です。”candle”の他にはデフォルトの”ohlc”や、”line”, “renko”, “pnf” が指定できます。それぞれイメージ通りの出力が得られるので興味がある方は試してみてください。

出来高の追加は volume=True を指定します。

また、移動平均線は、mav 引数で指定します。整数を一つ指定すればその日数の移動平均が1本、配列等で複数の整数を渡して数本引くこともできます。

チャート全体をもう少し横長にしたいなど、縦横比率を変えたい場合は、figratioで指定します。デフォルトは(8.00,5.75) です。どうも名前の通り、数値の比だけが重要のようです。(4, 2)と(2, 1)の結果が一緒でした。

以上、やってみます。

mpf.plot(
    price_df,
    type="candle",
    volume=True,
    mav=[5, 12],
    figratio=(2, 1),
)

出力がこちらです。

いい感じですね。

この他にも見栄えを整えるオプションは多数用意さてれいるのですが、いくつかの組み合わせがstyleとして用意されています。style=”yahoo”なんてのもあります。
こちらのページにサンプルがまとまっているので、気に入ったのがあったら使ってみるのも良いと思います。(僕は一旦上の、style=”default”でいいかな。)

今回はデータを渡すだけでサクッとチャートを描いてくれるmplfinanceの基本的な使い方を紹介しました。近いうちの記事で、これに別のテクニカル指標を表示したり線や点を追加するなどのカスタマイズ方法を紹介していきたいと思います。