今回も出典は沖本先生の経済・ファイナンスデータの計量時系列分析から。
ホワイトノイズの線形和で表される過程を移動平均過程(moving average process)と呼びます。
$q$を1以上の整数ととすると、q次移動平均過程$MA(q)$は次で定義されます。
$$y_t=\mu+\varepsilon_t+\theta_1\varepsilon_{t-1}+\theta_2\varepsilon_{t-2}+\cdots+\theta_q\varepsilon_{t-q},\ \ \varepsilon_t\sim W.N.(\sigma^2)$$
そして、$y_t$が$MA(q)$過程に従うことを $y_t\sim MA(q)$と書きます。
$MA(q)$過程は常に定常であり、さらに次の性質を持ちます。
$$
\begin{align}
E(y_t) &= \mu\\
\gamma_0 &= Var(y_t) = (1+\theta_1^2++\theta_2^2+\cdots+\theta_q^2)\sigma^2\\
\gamma_k & = \left\{
\begin{matrix}
\ (\theta_k+\theta_1\theta_{k+1}+\cdots+\theta_{q-k}\theta_{q})\sigma^2, & (1\leq k \leq q)\\
0,& (k\geq q+1)
\end{matrix}
\right.\\
\rho_k & = \left\{
\begin{matrix}
\frac{\theta_k+\theta_1\theta_{k+1}+\cdots+\theta_{q-k}\theta_{q}}
{1+\theta_1^2++\theta_2^2+\cdots+\theta_q^2} , & (1\leq k \leq q)\\
0,& (k\geq q+1)
\end{matrix}
\right.
\end{align}
$$
式から分かる通り、MA(q)過程の q+1次以降の自己相関は常に0になります。
そのため、長期間にわたる自己相関を移動平均過程でモデル化するには多くのパラメーターが必要になります。