時系列データの分析において重要な定常性の定義のメモです。
用語は沖本先生の経済・ファイナンスデータの計量時系列分析の定義に従っています。
確率過程の定常性とは、その過程の同時分布や基本統計量の時間不変性に関するものです。
何を不変とするかによって、弱定常性 (weak stationarity)と強定常性(strict stationarity)に分類されます。
以下、$y_t$を確率過程とします。
弱定常性
弱定常性は、過程の期待値と自己共分散が一定であることです。
定義:
任意の$t$と$k$に対して、
$$
\begin{align}
E(y_t) & = \mu\\
Cov(y_t, y_{t-k}) & = E[(y_t-\mu)(y_{t-k}-\mu)] = \gamma_k
\end{align}
$$
が成立する場合、過程は弱定常(weak stationary)と言われます。
$y_t$の期待値は任意の$t$に対して一定で、$y_t$と$y_{t-k}$の共分散は$k$の値によってのみ決まります。
また、この二つが時点に依存しないので、自己相関も時点に依存しません。
経済・ファイナンスの分野では単に定常性というと、弱定常性をさすことが多いそうです。(沖本本 P10)
強定常性
強定常性は、同時分布が不変であることを要求します。
定義:
任意の$t$と$k$に対して、$(y_t,y_{t+1},\cdots,y_{t+k})$の同時分布が同一となる場合、
過程は強定常(strict stationary)と言われます。
弱定常は期待値と共分散だけに対する仮定だったので、強定常のほうが名前の通り強い仮定になります。
ただし、強定常ならば絶対に弱定常というわけではなく、
“過程の分散が有限であるならば、”強定常過程は弱定常過程である、
という風に一つ条件が必要です。