普段、ターミナルでコマンドを打ちはしますが、Bashスクリプトを書くことも読むこともあまりありません。ただ、必要とあれば読み書きできるつもりでいたのに他の人のコードを見ていて知らない記法に出会ったので、それについて調べたメモです。
見かけたのはこんな記述でした。
$ cp file.txt{,.backup}
みなさんはこれが何をしているかわかりますか?
実は上記のコマンドは以下のコマンドと同じ動きになります。
$ cp file.txt file.txt.backup
{}の中身が,で区切られて、0文字の文字列と「.backup」という文字列に分けられ、多項式の展開(因数分解の逆)のように、それぞれに file.txt がくっついて解釈されるのです。
このような記法をブレース展開(Brace Expansion)というそうです。ドキュメントはbashのマニュアル中にあります。 $man bash でマニュアルを開いて、 /Brace Expansion でマニュアル中を検索しましょう。
,(カンマ)区切りの単語群をそれぞれの単語に展開するというのが一番シンプルな動きです。また、数値や文字(1文字)であれば、{開始..終了}のようにして連番も生成できます。
また、面白いことに複数のブレース展開をくっつけると、数式の展開みたいなこともできます。
$ echo a{d,c,b}e
ade ace abe
$ echo {1..5}
1 2 3 4 5
$ echo {e..h}
e f g h
$ echo {1..3}{x..z}
1x 1y 1z 2x 2y 2z 3x 3y 3z
マニュアルを見ると、これを使って複数のディレクトリを作るサンプルなどが載っていますね。
$ mkdir /usr/local/src/bash/{old,new,dist,bugs}
これを実行すると、/usr/local/src/bash/ 配下に、old、new、dist、bugs、の4ディレクトリが作れるようです。
自分なら以下のように書きますが。
$ cd /usr/local/src/bash/
$ mkdir old new dist bugs
mv や cp のように 引数を2つ取るコマンドに対して、このブレース展開をさっと書けると確かにかっこいいかもしれないですね。特にmv やcpは既存のファイルに対する操作なので補完が効きます。
cp file.txt まで補完でさっと入力して {,.backup} をつけて実行と。
ただ、ファイルパスが短い場合、特にカレントディレクトリでの作業の場合は cp file.txt file.txt と補完で入力して .backup をつけるのと比べてどれほど手間の削減になっているのかと考えると微妙な気もします。
cdで該当ディレクトリにどうせずに深い階層にあるファイルをバックアップするときは確かに便利です。以下の例のような長いパスを2回書かずに済みます。
$ cp /Users/username/Documents/folder1/folder2/folder3/sample_file.txt{,.bk}
このブレース展開はbashのfor文の範囲指定でも使うことができます。というより、こちらの方が一般的な使い方だと思います。
$ for i in {1..5}
> do
> echo $i
> done
1
2
3
4
5
正確では無いかもしれませんが、このfor文の記法の{1..5}の部分にブレース展開という名前がついていて実は他のコマンドの引数を生成するのにも使えますよ、と理解するのが良いように思っています。