前回の記事で二項分布の期待値と分散を直接計算したわけですが、記事中でも述べている通り、
二項分布の期待値や分散を導出するのはモーメント母関数を使った方が楽です。
マイナーな方法だけ紹介しているというのも変なので、この記事で二項分布のモーメント母関数について紹介します。
早速ですが、確率関数は
$$P[X=k] = {}_{n}\mathrm{C}_{k}p^k(1-p)^{n-k}$$
なので、モーメント母関数は次のようになります。
$$
\begin{align}
M_X(t) &= E(e^{tX})\\
&= \sum_{k=0}^{n} e^{tk}{}_{n}\mathrm{C}_{k}p^k(1-p)^{n-k}\\
&= \sum_{k=0}^{n} {}_{n}\mathrm{C}_{k} (pe^{t})^k(1-p)^{n-k}\\
&= (pe^t + 1 -p)^n.
\end{align}
$$
最後の行の式変形は二項定理を使いました。
モーメント母関数を$t$で1回微分すると次式になります。
$$
\frac{d}{dt} M_X(t) = npe^t(pe^t + 1 -p)^{n-1}.
$$
$t=0$を代入することで期待値が得られます。
$$
\begin{align}
E(X) &= \left.\frac{d}{dt} M_X(t)\right|_{t=0}\\
&=np(p+1-p)\\
&=np.
\end{align}
$$
前回の記事の直接計算するのに比べて若干楽なのが感じられると思います。
続いて分散です。モーメント母関数の2回微分は次のようになります。
$$
\frac{d^2}{dt^2} M_X(t) = npe^t(pe^t + 1 -p)^{n-1} + n(n-1)p^2e^{2t}(pe^t + 1 -p)^{n-2}.
$$
正確には$n=1$の場合と$n\geq2$の場合でそれぞれ計算しないといけないのですが、結局どちらの場合も上の式で表されることが証明できます。
ここから二項分布の2次のモーメントが次のように計算できます。
$$
\begin{align}
E(X^2) &= \left.\frac{d^2}{dt^2} M_X(t)\right|_{t=0}\\
&= np(p+1-p)^{n-1} + n(n-1)p^2(p+1-p)^{n-2}\\
&= np +n^2p^2-np^2
\end{align}
$$
よって、二項分布の分散は次のように導出されます。
$$
\begin{align}
V(X) &= E(X^2)-E(X)^2\\
&= np +n^2p^2-np^2 – (np)^2\\
&= np(1-p).
\end{align}
$$
分散に関しては、直接計算するに比べてモーメント母関数を使った方がはるかに楽に導出できましたね。