全種類の景品を集めるのに必要な回数の期待値

いわゆるコンプガチャの問題です。

$n$種類の景品があるクジにおいて、全ての景品を揃えるためには何回程度引けば良いのか(=期待値)を考えていたところ、
うまく解けたので記事にすることにしました。

まず改めて問題の前提条件を整理しておきます。
– クジには$n$種類の景品がある。
– どの景品も当たる確率は等しく$1/n$である。
– クジは無限にあり、過去の景品は将来のクジの確率に影響しない。
– 全集類の景品を最低1回引くまでクジを引き続け、その回数の期待値を求める。

3番目の条件は重要です。要するに景品Aがなかなか出なかったからといって、そのあと景品Aを引ける確率が上がったりしないということです。

当初、場合分けを色々考えてアプローチしていたのですが、次のように考えるとすんなり解けました

この問題は、全ての景品が揃うまでのクジの回数を次のように分解して考えます。

全ての景品が揃うまでの回数 =
1種類目の景品を引くまでの回数
+ 1種類持っている状態から2種類目の景品を引くまでの回数
+ 2種類持っている状態から3種類目の景品を引くまでの回数
・・・
+ $n-1$種類持っている状態から$n$種類目の景品を引くまでの回数

すると、期待値の線形性から次のようになります。
$$
E(\text{全ての景品が揃うまでの回数}) = \sum_{k=1}^{n}E(\text{k-1種類持っている状態からk種類目の景品を引くまでの回数})
$$

あとは、$k-1$種類持っている状態から$k$種類目の景品を引くまでの回数の期待値がわかれば良いです。
ここで、$k-1$種類持っているということは、持っていない景品は$n-k+1$種類であり、
これは、$\frac{n-k+1}{n}$の確率で当たり(=まだ持ってない景品)を引けるクジと考えることができます。
そして、そのあたりを引くまでの回数は、$p=\frac{n-k+1}{n}$の幾何分布に従うので、
前回の記事で見た通り、その期待値は$\frac{1}{p}=\frac{n}{n-k+1}$となります。

よって、
$$
E(\text{k-1種類持っている状態からk種類目の景品を引くまでの回数}) = \frac{n}{n-k+1}
$$
ですから、
$$
E(\text{全ての景品が揃うまでの回数}) = \sum_{k=1}^{n}\frac{n}{n-k+1} = \frac{n}{n} + \frac{n}{n-1} + \cdots + \frac{n}{1}
$$
となり、和の順番を入れ替えて$n$で括ると、
$$
\begin{align}
E(\text{全ての景品が揃うまでの回数}) &= n\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots \frac{1}{n}\right)\\
&= n\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}
\end{align}
$$
となります。
シンプルで美しい結果になりましたね。

ついでにですが、分散も求めておきましょう。
$X$と$Y$が独立の時、期待値同様に分散も$V(X+Y)=V(X)+V(Y)$と分解できることに注意すると以下のようになります。
$$
V(\text{全ての景品が揃うまでの回数}) = \sum_{k=1}^{n}V(\text{k-1種類持っている状態からk種類目の景品を引くまでの回数}).
$$
パラメーターが$p$の幾何分布の分散は、$\frac{1-p}{p^2}$ですから、$p=\frac{n-k+1}{n}$を代入すると、
$$
\begin{align}
V(\text{k-1種類持っている状態からk種類目の景品を引くまでの回数}) &= \frac{1-\frac{n-k+1}{n}}{\left(\frac{n-k+1}{n}\right)^2}\\
&=\frac{n(k-1)}{(n-k+1)^2}
\end{align}
$$
となります。
よって、求めたい分散は、
$$
\begin{align}
V(\text{全ての景品が揃うまでの回数}) &= \sum_{k=1}^{n}\frac{n(k-1)}{(n-k+1)^2}\\
&= n\sum_{k=1}^{n-1}\frac{k}{(n-k)^2}
\end{align}
$$
となります。

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