sentencepieceを使ってみた(model_type: unigram / bpe / char)

このブログではテキストを単語に分割するときは概ねMeCabを使っていますが、実はMeCab以外にもテキストを分割する方法はいろいろあります。その中の一つであるsentencepieceを試してみたので紹介します。ちなみにこのsentencepiece、開発者はMeCabと同じ工藤拓さんです。
参考: SentencePiece: A simple and language independent subword tokenizer and detokenizer for Neural Text Processing

sentencepieceとMeCabの違いとしては、MeCabは文章を文法的な意味を持つ最小単位の単語(形態素)に分割する形態素解析エンジンなのに対して、sentencepieceは特に文法的な意味を考慮せずに分割するということがあります。
MeCabは辞書をもとに文章を分割しますが、sentencepiece(unigram/ bpe)はそうではなく生の文章から自動的に分割する単位を学習し、語彙を習得します。
unigram とか bpe というのはそのときのアルゴリズムにつけられた名前です。
この他、model_type=”word”ってのがありますが、これは特殊で、あらかじめ単語に分割されたデータから低頻出語をさらに分割することで学習します。(学習データの準備が違うので次の記事で紹介します。)
これだけだと何もメリットなさそうなのですが、sentencepieceでは語彙の数を事前にパラメーターで指定することができ、例えば語彙を8000語に収めたいなら8000語で学習するといったことができます。BoWのような表現をする場合はもちろんですが、RNNやTransformer系の機械学習モデルへの前処理として使う場合、埋め込み層の語彙数を事前に指定しないといけないので非常に便利な特徴ですね。また、コーパス全体で1,2回しか出てこないような低頻度語を防げるのもありがたいです。

GitHubのPythonラッパーのサンプルコードを見ながら動かしてみましょう。
参考: sentencepiece/python at master · google/sentencepiece · GitHub

サンプルに使うデータは例によってライブドアニュースコーパスです。ニュース記事本文を使います。
参考: livedoorニュースコーパスのファイルをデータフレームにまとめる

ちょっと使い方が独特で、まずモデルを学習するためのコーパスをテキストファイルで準備する必要があります。上記の記事で作ったライブドアニュースコーパスのCSVを、1記事1行のテキストに加工して保存しておきます。

import pandas as pd

# ライブドアニュースコーパスの本文を、1記事1行のテキストファイルとして書き出し
df = pd.read_csv("./livedoor_news_corpus.csv")
# 改行除去
df["text"] = df.text.str.replace("\n", " ")
# 全角空白除去 (blog記事上だと分かりにくいですが、全角スペースを半角スペースにしてます。)
df["text"] = df.text.str.replace(" ", " ")
# Line Separator 除去
df["text"] = df.text.str.replace("\u2028", " ")
# 前後の空白除去
df["text"] = df.text.str.strip()

# ファイル書き出し
with open('livedoor_corpus.txt', 'w') as w:
    for text_line in df["text"]:
        w.write(text_line + "\n")

これでコーパスができました。
このあと、sentencepieceのモデルを学習します。これもかなり使い方が特殊で、先ほど作ったテキストファイルと各種オプションを指定して学習を実行すると、モデルのバイナリ(.model)と、語彙(.vocab)の二つのファイルが出来上がります。ファイル名の拡張子以前の部分は model_prefix 引数で指定した文字列です。では早速、デフォルトの unigramモデルでやってみましょう。語彙数は適当に4000としました。

import sentencepiece as spm


spm.SentencePieceTrainer.train(
    input="livedoor_corpus.txt",  # コーパスファイル
    model_type="unigram",  # デフォルト
    model_prefix='livedoor_unigram',  # 出力されるモデルのファイル名に使われる
    vocab_size=4000,  # 語彙数
)

これで以下のように、livedoor_unigram.model/ livedoor_unigram.vocab ファイルが出来上がります。


$ ls
livedoor_corpus.txt
livedoor_unigram.model
livedoor_news_corpus.csv
livedoor_unigram.vocab

livedoor_unigram.vocabを開くと学習した語彙が見れます。

$ head -n 20 livedoor_unigram.vocab
<unk>	0
<s>	0
</s>	0
の	-3.17217
、	-3.41012
。	-3.81098
▁	-3.85549
を	-4.01854
が	-4.10413
に	-4.21314
は	-4.29892
で	-4.61122
と	-4.6203
」	-4.65722
「	-4.80934
も	-5.02828
な	-5.19927
)	-5.20129
(	-5.30642
い	-5.32545

先頭部分が1文字ばっかりで分かりにくいですが、ファイルの途中見ていくと、「する」とか「という」とかの単語もちゃんと出て来ます。<unk>,<s>,</s>の3単語がデフォルトで予約語とされていますが、この3語を含めて4000語です。control_symbolsやuser_defined_symbols という引数を使って、自分で定義したシンボルを入れることもできます。
参考: sentencepiece/special_symbols.md at master · google/sentencepiece · GitHub

さて、モデルが学習できたのでこれ使ってみましょう。出来上がったモデルファイルを読み込んで、それを使って文章をトークン化します。

# モデルの読み込み
sp = spm.SentencePieceProcessor(model_file='./livedoor_unigram.model')

# サンプルの文章
sample_text = "これからの年度末に向けて、引越しを考えている人も多いのではないだろうか?"

# 単語のid列への分割
print(sp.encode(sample_text))
[6, 1974, 3, 44, 230, 961, 9, 529, 53, 4, 893, 1612, 22, 7, 614, 134, 69, 2203, 3, 663, 1029, 88]
# 文字列への分割
print(sp.encode_as_pieces(sample_text))
# ['▁', 'これから', 'の', '年', '度', '末', 'に', '向け', 'て', '、', '引', '越', 'し', 'を', '考え', 'ている', '人', 'も多い', 'の', 'ではない', 'だろうか', '?']

# id列を文章に戻す
print(sp.decode_ids([6, 1974, 3, 44, 230, 961, 9, 529, 53, 4, 893, 1612, 22, 7, 614, 134, 69, 2203, 3, 663, 1029, 88]))
# これからの年度末に向けて、引越しを考えている人も多いのではないだろうか?

これで、テキストをトークン化とその逆変換ができましたね。

モデルを学習したときの、model_type=”unigram” の部分を model_type=”bpe” とすることでもう一つのByte pair encodingアルゴリズムも試すことができます。

spm.SentencePieceTrainer.train(
    input="livedoor_corpus.txt",
    model_type="bpe",
    model_prefix='livedoor_bpe',
    vocab_size=4000,
)

unigramとbpe、そんなに大きな違いないんじゃ無いかなという予想に反して、出来上がった語彙ファイルを見ると全然違います。

$ head -n 20 livedoor_bpe.vocab
<unk>	0
<s>	0
</s>	0
てい	-0
した	-1
った	-2
する	-3
▁・	-4
して	-5
ない	-6
ている	-7
から	-8
こと	-9
って	-10
os	-11
とい	-12
ます	-13
され	-14
です	-15
ック	-16

最初っから2文字ペアの単語がたくさん出て来ますね。
学習したモデルを読み込んで使う方法は同じです。語彙が違うので微妙に結果が変わります。
たった一文の比較で優劣つけるわけにはいきませんが、この例文だとなかなかどちらがいいとも言い難いです。

# モデルの読み込み
sp_bpe = spm.SentencePieceProcessor(model_file='./livedoor_bpe.model')

# サンプルの文章
sample_text = "これからの年度末に向けて、引越しを考えている人も多いのではないだろうか?"

# 単語のid列への分割
print(sp_bpe.encode(sample_text))
[1173, 596, 1561, 1747, 1915, 1334, 292, 1465, 1910, 2395, 1472, 1477, 808, 10, 710, 293, 1279, 579, 1609]
# 文字列への分割
print(sp_bpe.encode_as_pieces(sample_text))
# ['▁これ', 'からの', '年', '度', '末', 'に向', 'けて', '、', '引', '越', 'し', 'を', '考え', 'ている', '人も', '多い', 'のではない', 'だろうか', '?']

# id列を文章に戻す
print(sp_bpe.decode_ids([1173, 596, 1561, 1747, 1915, 1334, 292, 1465, 1910, 2395, 1472, 1477, 808, 10, 710, 293, 1279, 579, 1609]))
# これからの年度末に向けて、引越しを考えている人も多いのではないだろうか?

「実践・自然言語処理シリーズ2 形態素解析の理論と実装 (近代科学社/ 工藤拓(著))」に少しだけsentencepieceについての記述もあり、unigramとbpeの違いが少し記載されています。
そのまま引用します。

BPEは、ニューラル翻訳に標準的に用いられている手法であり、1文字1語彙から開始し、連結した際に最も頻度が高くなる二つの語彙を選び新たな語彙とする手続きを決められた語彙サイズに達するまで繰り返すことで語彙結合ルールを学習します。
(中略)
ユニグラム言語モデルは、テキストを符号化するときの符号長が最小となるように、分割モデルをEM法を用いて学習します。

なるほど、って感じですね。個人的にはBPEの方が具体的なアルゴリズムがわかりやすいです。

ちなみに、ユニグラム言語モデルは符号化したときの符号長を最小にするように分割するって書いてあるので、ユニグラムモデルの方が少ない単語数になるのかと思って、学習したテキストで試したのですが結果は逆でした。不思議です。

print(df.text.apply(lambda x: len(sp.encode(x))).mean())
# 814.231301751052

print(df.text.apply(lambda x: len(sp_bpe.encode(x))).mean())
# 811.67992398534

今回の記事の主題はほぼここまでなのですが、model_typeには次の記事で取り上げるwordの他にもcharってのがあるので、一応これも紹介しておきます。

これは非常に単純なやつでして、単純にテキストを文字単位に分割します。学習するのはコーパスに登場した文字の一覧だけです。

spm.SentencePieceTrainer.train(
    input="livedoor_corpus.txt",
    model_type="char",
    model_prefix='livedoor_char',
    vocab_size=4000,
)

学習結果の語彙も予約語以外は文字単体だけです。4000種類もなかったので行数も少なくなりました。

$ head -n 20 livedoor_char.vocab
<unk>	0
<s>	0
</s>	0
の	-3.64481
▁	-3.64584
、	-3.80562
い	-3.93749
ー	-4.02605
に	-4.07836
る	-4.1384
と	-4.15518
で	-4.20032
し	-4.23772
な	-4.24788
。	-4.24846
た	-4.2548
て	-4.2787
を	-4.28831
が	-4.29299
は	-4.38982

モデルを読み込んで使う方法はunigramやbpeと同じなので略します。

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