正規分布の尖度がパラーメーターに依存しないことの証明

前回の記事で正規分布のモーメント母関数を算出しましたので、それを使って何かやろうとした記事です。
参考:正規分布のモーメント母関数を導出する

尖度の記事で、尖度の定義を紹介した時、
正規分布の尖度が0となるように3を引いた定義を紹介しました。
これは当然正規分布の期待値周りの4次のモーメントを標準偏差の4乗で割った値(4次の標準化モーメント)が、
パラメーターによらず定数$3$であることを前提とします。
これを証明してみましょう。

さて、モーメント母関数の性質をそのまま使うとすると、まずは
$$
M_X(t) = e^{\mu t+\frac{\sigma^2}{2}t^2}.
$$
を4回微分する事になるのですが、やってみたらかなり手間がかかりました。
ということで少しだけ工夫します。

まず、標準化モーメントが期待値$\mu$に依存しないことをみます。
(式変形の途中で$x-\mu=y$ と置換しました。また、分母の$\sigma^4$は定数なので一旦無視します。)
$$
\begin{align}
E\left[(X-\mu)^4\right] &= \int_{-\infty}^{\infty}(x-\mu)^4\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}dx\\
&= \int_{-\infty}^{\infty}y^4\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}e^{-\frac{y^2}{2\sigma^2}}dy\\
&= E\left[Y^4\right].
\end{align}
$$
よって、期待値が$0$の場合を考えれば良いことになります。
期待値が$0$、分散が$\sigma^2$の正規分布のモーメント母関数は、$M_X(t) = e^{\frac{\sigma^2}{2}t^2}$ですが、
これを4回微分するのも少々面倒なので、直接テイラー展開を計算します。

$$
\begin{align}
M_X(t) &= e^{\frac{\sigma^2}{2}t^2}\\
&=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{n!}(\frac{\sigma^2}{2}t^2)^n\\
&=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{n!}(\frac{\sigma^2}{2})^n t^{2n}.
\end{align}
$$
ここで、$t^4$の項に着目するわけですが、$\sum$の中の$t$の右肩に乗ってる指数部分が$2n$なので、着目するのは$n=2$の項です。
つまり
$$\frac{1}{2!}(\frac{\sigma^2}{2})^2 t^{4}.$$
少し整理してあげるとこうなります。
$$\frac{3\sigma^4}{4!}t^4.$$

ここから、次の式が言えて、$E[X^4] = 3\sigma^4$、少し変形して$E[\frac{X^4}{\sigma^4}] = 3$もわかります。

そして、この値が正規分布の期待値に依存しないことも先に示しているので、
一般の期待値$\mu$、分散$\sigma^2$の正規分布について、4次の標準化モーメントは、3であることが示されました。
$$
E\left[\frac{(X-\mu)^4}{\sigma^4}\right] = 3.
$$

正規分布は分散によって尖ったり平らになったりしてる印象があるのですが、
4次のモーメントによって定義される尖度という観点で見たら、尖り具合は常に一定ということですね。

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